味の濃いみそ汁や、肉のすき焼きなら、これに加える水の味に及ぼす影響はとんど感じませんが、ご飯をたくときの水となると話が違ってきます。大体、味が あるかないかわからないような淡味の米を、単なる水で炊くのですから、水の良し悪しができた米飯の風味に影響を与えることは当然なのです。
山形の新庄で食べた庄内米がうまかったからといって、東京へ持ってかえって吟味して炊いても、うまいご飯にはなりません。山形の酸性の良い水と東京都の水 道の水との違いがあるためです。せっかく日本のうまい米をパリヘ持っていって炊いても、どうもまずい。これもやはり水が違うからなのです。
パリの水はフランスのアルカリ土壌の広野を流れ流れて、すっかりアルカリ性の硬水になっているので、この水で炊いたご飯はまずいのです。